ヤマハ英語講師ユニオン結成第1回団体交渉までの経緯
2019 年1⽉23 ⽇作成
問題のきっかけ〜第1回⽬の要望書の提出前まで 2018年4月18日〜8 ⽉中旬
■2018年4月18日 ⼤東楽器所属 英語講師の1⼈がヤマハミュージックジャパンは⼤東楽器担当社員⼤久保⽒に対し、契約形態に関する質問のメールを送る。5月17日に督促後、5月25日に⼤久保⽒よりメールにて回答。
【質問と回答の内容】
質問1:委任契約なのになぜ給与が源泉徴収されているのか?
回答:税法上の理由。⾳楽講師の場合、所得税法204 条1項5号のにある「⾳楽指揮者、楽⼠、舞踊家」に準じて、事業所得として源泉できるのに対して、英語講師の場合、源泉の根拠となる事項が税法にない。そのため、事業所得とすることは不適切と税務署から指摘があった。
質問2: 給与所得なのになぜ社会保険と雇⽤保険に加⼊されていないのか?
回答:上記の通り、報酬は給与でありながら、雇⽤形態は委任なので、社会保険は適⽤されない。
■6月7日:⼤久保⽒と⼤東楽器 英語講師10 名で話し合いを持つ。その後メールでのやり取りを経て
■7月5日:ヤマハミュージックジャパンソフト事業部英語教室推進課副部⻑⼭⽥⽒が来阪。講師⼗数名と話し合い。
【話し合いの内容】
質問1: 委任契約なのになぜ給与が源泉徴収されているのか?
回答:英語教室設⽴当初は、英語講師も事業所得であったが、(税務署ではなく)
国税局からの指導で給与所得となった。ただ、昔のことなので、当時の担当もおらず、社内に残っている資料も少なく、詳しい経緯は不明。
質問2: 住⺠税の⽀払いに関して、給与所得なのに特別徴収ではなく普通徴収に
なっているのはなぜか?普通徴収理由に不定期⽀払いのためとあるが、おかしいのではないか?
回答: 休任したり、退任したり、⽀払いが不定期な講師が2割程度いる。ただ近年、市町村から特別徴収に移⾏するよう⾔われ始めているので、ここ数年で特別徴収に移⾏する予定。
この時期は税法上の話が中⼼。こちらから「おかしいですよね、どうしてですか?」と質問しても、ヤマハミュージックジャパン側は「税務署や国税局などの指導や通達に従っており間違っていない、但し、昔のことなので経緯は不明、調べておきます」という内容のことを繰り返すのみ。
また、私たちも契約は個⼈事業者で税法上は給与所得者とねじれているが、果たしてどちらが適切なのか分からずにいた。またこの時期、上記の質問メールを送った講師はいろいろな労働相談の窓⼝を訪ねたり、メールで問い合わせたりしていた。
【相談した機関】
・⼤阪労働局➡「あなたは労働者ではない」と、話も聞いてもらえなかった。
・ゼネラルユニオン
・東税務署
・連合⼤阪
・近畿税理⼠会
・全労連
そして、別の講師が知⼈の紹介で、岩城弁護⼠/清⽔弁護⼠と出会う。これらの労働関係機関や弁護⼠の方々との相談を重ねる中、私たちの働き⽅には使⽤従属性があり、実態は雇⽤関係のある「労働者」であり、委任契約は不適切と確信を持つ。
第1回⽬の要望書の提出前〜労働組合結成前まで 2018.8.21〜12 ⽉初旬
■2018年8月21日: 講師のうち1⼈を代表者として「⼤東楽器所属ヤマハ英語教室講師有志⼀同」で、ヤマハミュージックジャパン に「ヤマハ英語教室講師雇⽤形態に関する要望書」を送る。
【内容】
ヤマハ英語講師は、ヤマハミュージックジャパン と委任契約を締結しているが、実態は雇⽤関係にある。今までのヤマハミュージックジャパン 側の説明は、納得できるものではなく、今後も真摯な対応が期待できない。よって、この要望書を提出する。私たちは、不安な雇⽤形態におかれており、離職者が多い。また、働いている者も、将来への不安を抱えている。到着後30 ⽇以内に回答ください。
要求事項として、
⒈ 委任契約ではなく、直接雇⽤契約とする事
⒉ 雇⽤形態については、以下を選択できるもので、全て社会保険完備とする事
① 正社員 ②契約社員 ③時給制パートタイム
⒊ 現在の稼働の報酬よりも下回ることがないよう、給与額等の条件について⼗分に協議すること。
但し、導⼊に⾄るまでの暫定措置として、以下のことを求める。
⒈ 無償とされている講師会議、研修等に対する⼿当の⽀給
⒉ イベント時期の講師の持ち帰り残業、準備、リハーサル等に対する⼿当の⽀給
⒊ 体験レッスン謝礼の⾒直し
■9月6日:7月5日にも来られたヤマハMJ ⼭⽥⽒と共に⼈事部佐藤⽒(役職 不詳)
が東京から来られ、講師⼗数名と話し合い。内容的には7月5日 の話し合いから進展なし。
■9月12日: 要望書に対する回答が郵送で届く。不在時に配達された書留であった為、受け取りが遅れたが、発送は9月6日 付け。東京から⼭⽥⽒、佐藤⽒が来られ話し合いを⾏なった⽇であり、ヤマハミュージックジャパン の対応に不信感を持つ。
【回答の内容】
① 要望書を提出した「有志⼀同」の⽒名の明⽰
② 要望はヤマハ英語教室運営の根幹に関わるレベルのもので、30 ⽇以内の回答は困難。話し合いを持った9月6日 の30 ⽇後に期限を変更してほしい。
■9月19日: 講師有志のうちの3⼈が、岩城弁護⼠、清⽔弁護⼠を訪ね、対応を相談。ヤマハミュージックジャパン から要求されている⽒名の明⽰については、回答を保留し、労働組合を作って交渉してはどうかとアドバイスされる。
■9月22日: ヤマハミュージックジャパン に対し、回答書を郵送。
【内容】
個⼈名の明⽰ついては、有志⼀同で検討する必要がある。その他様々なことにも
検討する必要があり、現時点では回答を控えます。
■10月4日: 「ヤマハ英語教室における講師契約の在り⽅を考える勉強会」開催
寝屋川市 アルカスホール 会議室 13:00〜14:30 出席者:ヤマハ英語講師⼗数名
ゲスト:岩城弁護⼠、清⽔弁護⼠、他1名(労働組合関係者)
■10月5日: ヤマハミュージックジャパンから10月4日付で⽂書が届く
【内容】
有志の⽒名の明⽰がされないので、8月22日 付の要望書へ回答は⽒名の明⽰の後にする。以降、会社の窓⼝として経営管理部⻑ 濱⽋(はまかけ)氏が対応する。
■11月22日: 勉強会
寝屋川市 アルカスホール 会議室 10:00〜12:00 出席者:ヤマハ英語講師⼗数名
ゲスト:岩城弁護⼠、清⽔弁護⼠、他4名(労働組合、個⼈加盟ユニオン関係者)
【内容】
労働組合の⽴ち上げと、個⼈加盟のユニオンへの加盟について検討。
この時期、ヤマハミュージックジャパンに対し要望書を送ったものの、誠実な回答は得られず、有志の⽒名の開⽰を求められた。
⾃分達の雇⽤を守りながら、ヤマハミュージックジャパン と対等な⽴場で交渉するためには、労働組合を結成すべきということになり、弁護⼠の⽅の協⼒も受けながら、公式、⾮公式に検討を重ねる。
個⼈加盟のユニオンに加盟することも検討されたが、⾮⼒ながらも⾃分達で主
体性を持って⾏動しようということで、⾒送った。
労働組合結成〜 2018.12 ⽉初旬〜 2019.1⽉
■2018年12月2日 労働組合結成⼤会準備 寝屋川市 アルカスホール 会議室 18:00〜20:00 労働組合を結成することを正式に決定。結成⼤会に向けて準備。
■12月6日 労働組合「ヤマハ英語講師ユニオン」結成⼤会 寝屋川市 アルカスホール 会議室 13:00〜14:30 14 名(出席13 名、委任状での⽋席1名)で結成。“私たちは労働者です”をスローガンに活動していくことを誓う。朝⽇新聞の記者の⽅が取材に来られる。
■12月7日ヤマハミュージックジャパン宛に「労働組合結成通知」「団体交渉申し⼊れ書」を郵送。
■12月10日ヤマハミュージックジャパン に「要求書」を郵送
要 求 書
2018年12月10日
株式会社ヤマハミュージックジャパン
代表取締役社長 押木 正人 殿
ヤマハ英語講師ユニオン
執行委員長 清水 ひとみ
大東楽器所属 ヤマハ英語講師有志は、2018年4月ごろより、ヤマハミュージックジャパンに対し、再三、私たちの雇用形態に関する問い合わせをし、待遇改善を申し入れてきましたが、いまだに納得のいく回答をいただいておりません。
そこで、12月6日に労働組合「ヤマハ英語講師ユニオン」を結成し、労働組合法のもとで行動・要求することにいたしました。同日付で送付した労働結成通知書と団体交渉申し入れ書は、すでにお手元に届いていると思います。
本日、組合員の総意により、本要求書を提出いたします。誠意を持って、12月20日までに文書で回答し、申し入れの通り団体交渉をお願いします。
記
⒈ 契約形態の変更
(1)実態に合わない委任契約ではなく、直接・無期雇用契約とすること。また該当者 については各種社会保険を適用すること。
(2)契約形態の変更により、私たちの労働条件等に不利益が生じないようにすること。
⒉ 当面の処遇改善
(1)現在無償となっている会議や研修、研究会、K&Eに関わる業務に対し、拘束時間に 応じた謝礼を支給すること。
(2)体験レッスン、イベント謝礼を以下のように改善すること。
①体験レッスンは1回4,000円を基本とし、実施回数に応じて支払うこと。
②イベントについては拘束4時間を越えた場合、一律とせず、2時間ごとに2,000 円ずつ増額していくこと。
③リハーサルや打ち合わせに対しても、イベント当日と同様の謝礼を支払うこと。
(3)通常のレッスン謝礼を以下のように改善すること。
①受講生が1人または2人で開講した場合も、3人分の謝礼を支払うこと。
②土日稼働のレッスン謝礼の割増をすること。
土日は社会的に休業日であり、出にくい曜日の割増として土曜日の謝礼は平日の1.3 倍、日曜日は1.5 倍とすること。
③勤続年数加算を改善すること。
現行制度は経験を正当に評価せず、かつ公正な経験加算制度になっていないため、制度を見直し、意欲を持って働き続けられる賃金にすること。
10 年を越えても1年ごとに勤続年数加算をする、また、週3日以下の稼働についても減額することなく加算すること。以上
〈注〉委任契約書で、賃⾦のことが「謝礼」となっている。労働者に「謝礼」は不適切だが、ヤマハミュージックジャパンとの交渉の際の混乱を避けるため要望書では「謝礼」とした。
■12月15日 ヤマハミュージックジャパンより、12月14日 付で、団体交渉を受ける、と連絡の⽂書が届く。電話やメールでのやり取りの後、第1回団体交渉の⽇程と場所が決定。
■12月27日 ヤマハ全講師研修(年1回)近畿、北陸、沖縄地区の全講師が集まる研修会。他の楽器店で働く知り合いの講師に労働組合加⼊を呼びかけるチラシを渡す。
■2019年1月21日 朝⽇新聞社に「ヤマハ英語講師が労働組合を結成した」という記事が掲載される。
■1月24日 第1回 団体交渉 クレオ⼤阪(⼤阪市男⼥共同参画センター東部館) 研修室 10:0〜11:30
たくさんの⽅々にご⽀援をいただきながら、ヤマハミュージックジャパンと団体交渉の機会を持つところまで来ました。
朝⽇新聞に掲載されたことにより、全国各地のヤマハ英語講師から、労働組合に加⼊したい、応援したいという声が届き、それを受け⼊れるべく組織作りもしていかなければなりません。
今⽇(2019/1/23)現在までの経緯をまとめましたが、4 ⽉に1⼈の講師が声をあげたことで始まったこの流れに、同じ楽器店所属のほとんど全員の講師が賛同し、「ヤマハ英語講師ユニオン」が誕⽣しました。参加しなかった講師も、それぞれ事情があり、決して労働組合に反対の⽴場を取っているわけではありません。この流れがさらに⼤きく強くなり、ヤマハミュージックジャパン との交渉において、私たちの労働環境の改善を勝ち取ること、そしてそれがヤマハ英語教室の発展につながることを願い、報告を終了します。